« ルイス・ミゲルのCDを買う | トップページ | 会社用に帰宅支援セットを買う »

聯子の想い:跡取り娘が父と闘う気で出した「ランチボックス」 (ThinkPad Edge 13”)

神奈川県、大和---。

「ホント頑固ですよね。でも、言うことに筋が通っている。自慢の父ですよ」

老舗の四代目、聯子は、そう言って笑った。
聞こえているはずの父は、今日配達する松花堂弁当の仕上げに忙しい。

『あそこの松花堂弁当は、変わらない味がいい』

そう言って目を細め、一人でいくつも抱えて買って帰る客がいるのが、聯子にも自慢だった。
…でも、彼女の目には、父の作るものが不格好に思えて、文句を言ってばかりだった。
まず、食材以前の問題だ。

「箱がかわいくない。真っ黒な弁当箱なんて、やだ」

自慢の味も、女の子には濃すぎるように思えた。
自分なりに余所のを研究しては、父に「流行を取り入れろ」と言ってみた。
父も一度は聯子の言う通りに作るけれど、すぐまた元のレシピに戻してしまうのだ。

「それが客の好みだから」と。

彼女には理解できなかった。

「ちゃんと続ければ、きっと売れるものに育つよ!」

聯子は言い続けた。跡を継ぐことを心に決めていたのだ。父には語らずとも…。

「伝統を守るだけじゃダメ!もっと新しいお客さんの言葉を聞いてみてよ!」

何度も訴えては、また元に戻る。そのくり返し。

やがて彼女は、意を決して厨房に入り、自分の手で弁当を作り始めた。
厨房で、押され、小突かれ、投げ出され、外で埃まみれになっても、負けない。
そんな拷問のような試練--父も先代も、ずっと乗り越えてきた--を、全て経験した。
今年からその結晶を、父の松花堂弁当の横に置いて、そっと売り出そうとしている。

「父のお弁当と違って、秘伝のダシもなければ、高級な食材も使っていません。安くして、みんなに食べてほしいから。当然、批判は覚悟の上です」

実は聯子は、2つのお弁当を世に問うつもりでいる。
どちらも、まだあまり世に出ていない食材をメインにしたものだ。

まず1つは、馴染みの客が2つ目に手に取ってくれそうな、小さなお弁当。
蓋をあけなければ、父の松花堂弁当に似ていなくもない。
ただ、それでも少し色付けをして、自分らしさを出してみた。それは開けてみればすぐ分かる。箸休めにも流行を取り入れた。
包装紙にもこだわった。父が使いたがらない、白い色も身にまとった。限定で、赤も用意するという。

「赤いのは、直接わたしに連絡してくれた人にだけ売ろうかな、なんて思ってます。
あと、これは秘密ですけど、パテを2つにしたものも試作中なんです」

そして聯子はもう1つ、大きくて大胆な仕上げの、洒落た「ランチボックス」も用意している。こちらが彼女の本命だ。箱も自分でデザインし、最初から大胆な赤も店に並べる。

「気に入ってくれれば、もう少しボリュームを増やして、大きくやってみたい。食後のスイーツも、本当はちゃんとつけて出したい。お子様ランチだと言われそうですけど」

聯子の夢は広がる。

「私なりに、こっちには角をつけたままで売りたかったんです」

そう言いながらも聯子は、父や馴染みのお客さんの視線が気になるらしい。
…でも、もう後には引けない。跡取り娘は、自分の足で一歩踏み出したのだから。
彼女はもう、前だけをまっすぐ見ている。




追記:

聯子のお弁当は、残念ながら予定の日に店に並ぶことはなかった。
一部の食材が、それも一番の売りの食材が、揃わないのだ。

「残念です。今が旬の食材ですからね。でも負けませんよ!必ずお店に並べます!
順調にオーダー入っていますもん。お客様は裏切れません!」

電話口の彼女の声は、弾んでいた。
筆者も、首を長くしながら『赤いランチボックス』を心待ちにしているところだ。
果たして、Edgeの効いた、口当たりの良いものになっているだろうか…。
無口で職人気質の父も、気になっていると思う。

--春は、きっと、もうすぐだ。

|

« ルイス・ミゲルのCDを買う | トップページ | 会社用に帰宅支援セットを買う »

「パソコン・インターネット」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/133996/47304698

この記事へのトラックバック一覧です: 聯子の想い:跡取り娘が父と闘う気で出した「ランチボックス」 (ThinkPad Edge 13”):

« ルイス・ミゲルのCDを買う | トップページ | 会社用に帰宅支援セットを買う »